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2003.04

 
(3) 三奉請(さんぶじょう)

毎月、浄土宗のお経の解説をしています。
今月は「三奉請(さんぶじょう)」です。三奉請とは、一に阿弥陀さま、二にお釈迦さま、三にその他十方の仏さまがたをお招きする文です。

奉 請 弥 陀 世 尊 入 道 場
  ぶーじょう みだせそん   にゅうどうじょう
奉 請 釈 迦 如 来 入 道 場
  ぶーじょう しゃかにょらい  にゅうどうじょう
奉 請 十 方 如 来 入 道 場
  ぶーじょう じっぽうにょらい にゅうどうじょう

請じたてまつる弥陀世尊、道場に入りたまえ
請じたてまつる釈迦如来、道場に入りたまえ
請じたてまつる十方如来、道場に入りたまえ

浄土宗ではこのように、三者の仏さまを考えます。まず第一に、そのお名前をお呼びする(念仏する)ことで私たちを救ってくださる阿弥陀さま。次に、仏教のおおもとであり、「念仏して阿弥陀仏の救いを求めなさい」と教えられたお釈迦さま。そして、すでにさとりを得られたそのほかの多くの仏さまがたです。こうした仏さまがたに、「どうぞこの道場(仏道修行の場)におこしください」とお願いする、これが三奉請です。

仏さまがたをお招きする――このように書いてみると意味はあまりむずかしくなさそうです。しかし、実を申しますと、この文は私にとってはとても難解でした。なぜかといいますと、確かにことばの意味はわかるのですが、「でははたして『おこし下さい』とお願いすれば本当に来て下さるのだろうか」――これは私にとっては大きな疑問でした。たとえば、一生の一大事というときに仏さまが来て下さる、それなら分かります。しかし、「奉請……」ととなえるだけで仏さまがたが来て下さる? 本当に?
しかし、「浄土宗のおつとめ」は読む順番が決められています。疑問があるからといって「ここのところは一つ飛ばして……」というわけにもまいりません。疑問に思いながらも何百回、何千回と声に出して読んでまいりますと、少しずつ「ああ、そうか」と分かってまいりました。どういうふうに分かってきたかと申しますと、肝心なことは「(仏さまがたが)本当に来て下さるかどうか」ではなく、「『どうぞおこし下さい』と、受け身になって待つ心」だということが分かってきました。先のことをあれこれ心配しなくてもいい、わが身と心をできる範囲で整えて「いつでもおこし下さい」と待つ心、この心があれば充分だ、と思いました。そう気づくと不思議なもので、このごろは三奉請をとなえてやっと仏さまがたの近くにいられる、そんな気がしています。

さあ、それでは、居ずまいを正して仏さまがたをお待ちしましょう。
「奉請弥陀世尊入道場……」