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2003.08

 
お盆のお経『盂蘭盆経』

8月は旧盆。今年は梅雨が長引きました。梅雨が明けて、青空に太陽の輝き、蝉の声、風鈴の音、西瓜、里帰り…そしてお盆、というと、やはり日本の夏―という感じですね。
お盆のお経、というのがあります。この、お盆のお経『盂蘭盆経(うらぼんぎょう)』をちょっとのぞいてみましょう。

このお経の主役は、目連尊者という、お釈迦さまのお弟子さまです。この方は超能力の持ち主です。例えば、空を飛べる、変身の術、過去生のことが分かる、他人の考えていることが分かるとか、そういったことです。
この方があるとき、亡くなったお母さんを仏の道に導きたいと思いました。それで、得意の超能力をもってお母さんを捜してみる。そうしましたら、なんとお母さんは餓鬼の世界で苦しんでいる。その世界は「不見飮食(ふけんおんじき)」飲み物も食べ物も見当たらない。骨と皮に痩せ衰えたお母さんがいる。
目連さまは、すぐにご飯を鉢に盛って差し出した。お母さんは鉢をとって、食べようとします。ところが、口にはいる前にごはんが火となって燃え上がり、炭になってしまい、食べることが出来ない。それを見て、「目連大叫(だいきょう)」目連さまは大声で叫び、号泣します。そして、お釈迦さまの所に駆け戻り、ことの次第を話しました。
お釈迦さまは、こう言います。
「あなたの母は、罪根―これまでに犯した罪の根が深くはっている。あなた一人の力では、これはどうにもならない。だが、多くの僧侶たちの優れた力の助けを借りれば、母は解脱を得るであろう。
雨期の修行期間が明ける七月十五日に、沢山の素晴らしいご馳走を供え、僧侶たちに供養しなさい。これらの功徳によって、両親、七世の親だけでなく、六親眷族(またいとこまで)まで、三種の苦しみの世界から抜け出し、救われるであろう」
目連さまは、その通りにしました。そして、多くの僧侶が目連さまのご先祖の福楽を祈って供養を受けたところ、お母さんは餓鬼の世界の苦しみから見事に救われた、ということです。
目連さまは大変歓び、お釈迦さまにこう言います。
「私の親は、お釈迦さまの教えに従い、多くの僧侶たちの優れた力によって救われました。もし、未来の仏弟子で、親に仕え、先祖に孝行したいと思う者がこのお盆の供養をした場合、苦しんでいる親や先祖を救うことが出来るのでしょうか」
「よい質問だ、目連よ。誰でも皆、親や先祖に孝心を尽くさんとするものは、七月十五日、雨期の修行期間が明けた僧侶たちに、たくさんの飲み物、食べ物でお盆の供養を行ないなさい。もし父母が健在であれば、その寿命は百年に延び、病気も憂いもないであろう。さらに七世の先祖も苦しみを逃れ、神々の世界に生まれるであろう」
とおっしゃいました。

これが、お盆の行事のもととなるお経―親孝行な目連さまのお話です。
この中には、七月十五日ということが出てきます。お経によれば、お盆の供養はこの日なんですね。日本では実際には三日間とか四日間とかの幅をもってやっているわけです。迎え火、送り火、真菰(まこも)、キュウリの馬やナスの牛、ほおずき、提灯といったものもお盆にはつきものですが、お経には出てきません。しかし、これらはいずれもご先祖さまへのやさしい思いやり、という感じがします。日本人独自の、また地方色豊かなお盆の行事です。

今月はお盆のお経をご紹介しました。
暑さ厳しい日が続きます。皆さま、どうぞお大事にお過ごし下さいませ。

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