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2004.04

 
(9) 四誓偈 (しせいげ) その3

4月に入りました。桜の木の下で、新しい生活をスタートされた方も多いことでしょう。皆さまによき出会い、よき学びがありますように…。

さて、このコラムでは、浄土宗のおつとめ(お経)の解説を続けています。
香偈・三宝礼・三奉請・懺悔偈・十念・開経偈…と進んで参りました。
今月は「四誓偈(しせいげ)」の3回目です。

これは仏の説かれた『無量寿経』の中のお話。
修行僧ダルマーカラは、理想の仏国土を建設しよう、と決意します。そのために、48の誓いをたてました。この仏国土が建設されたあかつきには、48の誓いがすべて実現されることになります。そして、48の誓いをまとめる形で語られた偈文が「四誓偈」です。

 我建超世願 必至無上道 斯願不満足 誓不成正覚
(がごんちょうせーがん ひっしーむーじょうどう
しーがんふーまんぞく せいふーじょうしょうがく)
われ(ダルマーカラ)は、世に超えすぐれた48の願を建てた。必ず最高の覚りの世界に至ろう。もしこの48の願が満足しないならば、仏にならないことを誓う。

 我於無量劫 不為大施主 普済諸貧苦 誓不成正覚
(がーおーむーりょうこう ふーいーだいせーしゅー
ふーさいしょーびんぐー せいふーじょうしょうがく)
われは未来永劫にわたり、大いに恵みを施す主となろう。そして貧しく苦しんでいる多くの者をあまねく救おう。もしそれが叶わないならば、仏にならないことを誓う。

 我至成仏道 名声超十方 究竟靡所聞 誓不成正覚
(がーしーじょうぶつどう みょうしょうちょうじっぽう
くーきょうみーしょーもん せいふーじょうしょうがく)
われが仏道を成就したならば、わが名前が十方に響き渡るであろう。もし隅々まで響き渡らないならば、仏にならないことを誓う。

まず、ここまでを見てみましょう。上に書きましたように、ここには3つの願いが説かれています。

  1. 最高の覚りをひらき、48の誓願をすべて実現させよう。
  2. 貧しく苦しんでいる者を、未来にわたってすべて救おう。
  3. わが名前を十方にゆきわたらせよう。
そして、これらの願いのそれぞれに、「誓不成正覚」―(この願いが叶わないならば)誓って正覚を成ぜじ、つまり、仏にならない、と誓われています。
また、48の誓願の本文を見てみますと、やはり、「(この願いが叶わないないならば)、誓って正覚を取らじ」という同じような表現が、それぞれの誓願の最後に出てきます。

仏教のめざすものは成仏、覚りです。「覚り=苦しみからの解放」のためにさまざまな教えや修行が説かれているわけです。ことろがここでは、「わたしの仏国土に、さまざまな世界で苦しんでいる人々をすべてすくい取れないようであれば、そのような覚りはわたしの取るところではない」と説かれています。ご自分の覚りよりも、人々の救済の方に重点を置かれている―「誓不成正覚」の5文字の中に、大乗仏教の究極の姿が見て取れます。
また、『無量寿経』の他のところには「修行僧ダルマーカラは、すでに覚りをひらかれてから長いとき(十劫)を経ている」と説かれています。これはすなわち、48の誓願がすでに成就されたことを意味します。

少しややこしい話になりましたが、まとめるとこうなります。
「ダルマーカラはすでに『阿弥陀仏』という名の仏になられ、これら48の誓願をすべて実現されている」
そして、48の誓願の中でもとくに大切な誓願が、48の中の18番目、「念仏往生の願」といわれるものです。

この第18願は、お念仏の教えの依って立つ大事な誓願ですので、次回に見ていきましょう。

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