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2009.09

 
「仏事には疎(うと)くて…」

と、おっしゃる方々―
心配ご無用です。林海庵の檀信徒は、ほとんどがそういう皆さんです。

ここは新しいお寺ですので、
「両親や祖父母から、仏事について大体のことは教わっています」
という方はあまりみえません。そのように仏事になじみ深い方々には、すでに代々お付き合いのある菩提寺さまがあるからです。

「仏事は初めてです」「なにぶん不馴れなもので…」
という皆さんと、それぞれのお宅に合ったご供養の形を一緒に考えてゆく、というのがこの開教活動の大きな要素です。
伝統的な形を大切にしつつも、時代や家族形態の変化に対応してゆかなければなりません。檀信徒との相談の中で、私の方が「なるほど!」と気づきを頂くことも多いのです。

先日ご相談にみえた方は、
「新しく仏壇を求めるが、それをどこに置いたらよいか」
というお話でした。
その方は、ご自宅の間取り図をお持ちになったのです。
「仏壇をここに置いてはどうでしょうか」「いや、ちょっと待って下さい。」
二人で間取り図をはさんで頭を付き合わせ、しばし話し合います。
「リビングに置くとしたら…」「その場合は、キッチンのすぐ近くは良くないと思います」、
「そこはいい場所ですが、雨戸の戸袋のそばなので、毎日うるさいし…」、
「そこには、ピアノが置いてあります」、
「日常の生活スペースとは別の場所が良いのでは…」、
等々、ああでもない、こうでもない…
まるで私がそのお宅に上がりこんで、「ここはどうだろう」「あそこはどうだろう」と、ご家族と一緒に考えている感じでした。

話がまとまり、後日お仏壇が納まります。
四十九日のときに初めてご自宅に伺い、開眼式をつとめました。
お伺いするのは初めてであるのにもかかわらず、「このお宅には以前伺ったことがある」…かのように思え、そしてご家族と一緒にひと仕事終えたような、そんな満足感を感じました。
お仏壇を置く場所を決める、ということで、こういう「感じ」を経験したのは私にとっても初めてのことでした。■

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