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2011.01

 
法然上人夢譚(むたん)(1)... 一弟子の夢物語

新たな年を迎えました。
今年は浄土宗祖、法然上人の800年忌にあたります。
法然房源空─たぐいまれなるこの大宗教家は、仏教の流れを根本から変えるという一大事を成し遂げられました。
この巨人の全貌をご紹介することは私には力及びません。ここでは「群盲象を撫でる」ことになるのを承知の上で、私が夢に見た法然上人像をご紹介しましょう。

その夢を見たのは、15年ほど前の秋彼岸の時期でした。
法然上人は、高座上の座布団に足を組んで(あぐらをかいて)坐っておられました。私は初対面でしたが、その方が法然上人だと知っていました。
聴衆はたくさんおり、劇場のような感じで客席は暗くなっていました。どういう人たちが集まっているのか分かりません。最前列は高弟の人たちに占められているようでした。
法然上人は側のお弟子さんと小声で言葉を交わしていましたが、何を話されているのかは聴こえません。もうしばらくするとご法話が始まる様子でした。
法然上人は聴衆の方に目を向けると、その鋭い眼差しで場をゆっくりと見回しました。そのとき、私と目が合ったのです。時間が止まりました。
評判では、たいそう温厚で智慧に富んだ方、という話でしたが、とてもそんな感じには見えませんでした。何もかも一瞬にして見抜いてしまう怖い方、という印象でした。上品な人というイメージはなく、その鋭い眼光には、いきなり刃物を突きつける強盗のような恐ろしさがありました。
しばらく私のことを手のひらに乗せて、重さを量っているような感じでした。
ニヤッと笑うと、法然上人は別の人たちの方へ視線を移しました。
それだけでした。
かの人には、圧倒的な存在感がありました。温厚な優しい方、というのとはまったく正反対でしたが、恐ろしさも含めて、この存在感が人々を引きつけているのに相違ありません。

今も鮮やかに思い出すことができる夢です。■