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Q&A 48

質問48

仏教
お釈迦さまが生まれたとき、「天上天下唯我独尊」と言われたという話があります。ちょっとピンと来ないような、何となくお釈迦さまらしくないような、そんなふうにずっと感じていたのですが...
〈回答 48〉「天上天下(てんじょうてんげ)、唯我独尊(ゆいがどくそん)」——これは誕生の偈(げ)として知られています。お釈迦さまが生まれると間もなく、東西南北の四方に向かって七歩ずつ歩き、やがて右手で天を指さし、左手で地を指さすと、この誕生の偈を宣言された、といいます。
これは歴史的事実ではないでしょうが、仏教の本質に近いものを表現しているように思います。
お釈迦さまが生まれられたときにどうであったかは知るべくもありません。が、35歳で悟りを開かれたときは、まさしくこの偈文のような心境であられたことでしょう。
「自分にとって、すべての問題は解決した」——自己の強烈な存在感。時空を超える明晰な知性。ものごとのありさまが今やはっきりと理解できる。「わたしは目が覚めた。」と同時に、他者がすべて、ぐっすりと眠りこけているのがよく分かる。彼らとの間に横たわる、絶望的なまでの距離感...。
唯我独尊——これは、他人と比較して自分が抜きんでている、ということではありません。量的な差ではなく、質的な差を語った言葉です。そこには一片の驕りもありません。「この状態は、そうとしか言い表わしようがない」ということなのです。そして、この直後に、「眠りこけて苦しみに喘いでいる人々」に対する大いなる慈悲心が起こってくるのだと思います。
このような見方でこの言葉を読み直すと、少しまた違った印象になるのではないでしょうか?

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