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2016.09

 
Amazon「お坊さん便」などの僧侶派遣サービスに思うこと

 「お坊さん便」についてのさまざまな報道を見ながらの感想です。
 話の順序として、まず皆さんの前に法衣を着て現れる僧侶を3種に分類してみます。(大都市圏の場合です)

(1)お寺の住職・副住職・職員。主としてそのお寺の檀信徒を対象に儀式・行事などを行う方々です。
(2)その宗派の僧侶資格を取得しているが、お寺に住んでおらず、お寺から離れて活動している僧侶。「マンションお坊さん」と呼ばれる人たち。但し、自宅から寺院に通勤している人は(1)に含まれるので、ここでいうのは寺院に通勤せず独立して活動している方々です。
(3)その宗派の僧侶資格を持っておらず、業者(葬儀社・霊園・石材店・僧侶派遣業者)と関係を結び、もっぱら業者を介して葬儀・法事の読経をしている人。

 まず(3)の方々。医師であれば無資格で医療行為を行えば罰せられますが、宗教行為は罰せられません。仮に浄土宗の僧侶資格を持たない方が浄土宗のお経をあげてお布施を受け取っても、法律的な問題が生じるわけでもなく、「浄土宗」も「やめなさい」と申し入れることは通常はいたしません(統括しきれません)。もちろん道義的には大きな問題があります。形だけ読経を真似ても、その方はおそらく経文の意味や浄土宗の解釈などは分からないでしょう。一般の方がお経を聞いただけでは宗派の違いまでは分からない—そこにつけこんだ悪質な行為です。

 ついで(2)の方々。正統の僧侶資格を持っている、という点では安心ですが、独立して活動していること自体が問題を含んでいます。第一に、寺院本堂で日々のお勤めをしているわけではない。本堂を守るということは、一般の方々がお仏壇やお墓を守るということに対応しているといえます。一般の方々が行なっている日常の宗教行為を僧侶本人が行えていない訳で、ここに問題があります。さらに、お布施の収入が個人の生活費に充てられる。皆さんは当然のことだろうと思われるかもしれませんが、寺院の場合であれば、お布施はいったん寺院収入に計上されます。その中から住職は給与として生活費を支給されるわけです。寺院には人件費以外にも多くの支出があり、例えば宗派や本山を支える経費、次世代の僧侶を育てる費用、僧侶が学び合うための研修費用、宗派で出す出版物や教化資料を作る費用、寺院施設(礼拝施設)にかかる経費などが頂いたお布施の中から支出されます。一方「マンションお坊さん」であれば個人の生活費以外は負担しませんので、お布施の収入金額を抑えることができます。こうした方々が増えると、宗派や本山は成り立たなくなるでしょう。
 業者の仲介によって読経依頼を受ける僧侶は、この(2)(もしくは(3))に当てはまる場合が多いのです。心のこもった読経という点から見ると、果たしてご先祖のご供養が成立するのか疑わしく思われます。

 それでは(1)の方々、つまり近隣の寺院の住職さんに供養をお願いするとどうなるのか。快く引き受けて下されば良いのですが、そのお寺の檀家さんや紹介された方以外には門戸を閉ざしているお寺も多いのです。これは別に意地悪でそうしているのではなく、檀家さんへの対応だけで手一杯という状況なのです。中には門戸を開き新しい檀信徒を歓迎する寺院もありますが、外から見てもよく分からないでしょう。また「高額の布施を請求された」などの苦情が出る場合もあるので、檀家以外の方には「どういうお寺さんなんだろう」と敷居が高く思われるかもしれません。

 とすると、菩提寺のない方が葬儀や法事の読経を頼みたい場合、どこに依頼すればよいのか。
 まずは、各宗派の宗務庁(「宗務所」と呼ぶ宗派もあります)にお問い合わせ頂くのが一番良いと思います。

  ●浄土宗宗務庁
   (東京)Tel: 03-3436-3351
   (京都)Tel: 075-525-2200

 今後のことになりますが、私ども仏教界が菩提寺のない方々のためにどう対応を考えてゆくべきか。
 まずは開教寺院を増やしてゆくことです。寺院の不足している地域に新たな寺を建てる—至極当然のことであり、新興宗教であれば当たり前の事業です。ところが伝統仏教ではまだ始まったばかり。新しく建立された寺院は新しい檀信徒とのご縁を求めています。仏事相談を持ちかければ、悦んで対応してもらえることでしょう。小さくとも門戸を開いた寺が増えて行くことが望ましいと思います。(浄土宗では国内開教事業に積極的に取り組んでいます)
 さらに仏教会や各宗派が、菩提寺のない方々への対応に具体的に取り組むこと。「意識改革を!」という精神論だけではだめで、具体的・実務的な仕組みづくりを行う必要があります。

 今回は内側の事情の話になってしまいましたが、「お坊さん便」の件をきっかけとして、仏教界が動き出すことを期待しています。◆