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2006.12

 
玄関の花器

去る11月25日、林海庵の開山落慶法要を無事に勤めることができました。当日は好天に恵まれ、檀信徒や宗門関係者等、多数のご出席を頂きました。ご参加頂いた皆さま、ご協力頂いた皆さまに心より御礼申し上げます。
当日のことは、機会を改めて詳しくご紹介いたしましょう。

さて、法要の10日ほど前、ある友人から電話をもらいました。この人は島崎 猛(たけし)さんといいます。私が会社勤めをしていた頃からの友人―といっても、会うのは10年に一回くらいです。ふだんは年賀状を交換するだけ。彼は今、陶芸家です。
電話をもらったとき、「実は来週、開山落慶法要がある。めったにない法要なので出席しないか」と言いましたら、「関心はあるが、その日はたぶんゆっくり話せないだろう。法要の前に一度訪ねたい」という話。
旧友との久しぶりの再会でした。
振り返れば、二十歳代も前半の頃です。仕事の関係で、彼は毎夕、私の働いていた事務所に立ち寄っていました。お互いに忙しい時間帯でしたので、交わす言葉はわずかなものでした。やがて彼は退職し、インドに渡ります。「もうじきインドへ行く」という話を聞いたとき、心が騒いだのを覚えています。
一年近く経った頃に、連絡がありました。「帰国して、郷里の日立に帰っている。会いに来ませんか。」とのこと。
初めて彼の郷里を訪ねました。話題といえば、もちろんインドやネパールのみやげ話が中心です。
その7年後くらいに、私も自身の経緯でインドへ旅することになりました。が、ある意味では、島崎さんからインドの話を聞かなければ私もインドへ行かなかったでしょう。またインドへ行かなければ仏門に入ることもなかったでしょう…。
そして、陶芸家となった彼が林海庵を訪ねてくれたのが11月の16日。
「実は今、窯を冷ましているところです。いいものが焼けていたら、開山落慶のお祝いに送らせてもらいますよ。」
それから数日後に、素晴らしい花器が送られてきました。独特の製法による、宗教性の香り高い作品です。愛らしくもあり、またたいへん生き生きとしたものです。合掌の姿をしているので、玄関の正面に飾らせてもらうことにしました。林海庵を訪ねる人をあたたかく迎え、お帰りになるときも静かにお送りする―本当に、まるで生きているような花器です。

開山落慶法要の当日も、この花器が皆さまを玄関で迎えてくれました。
(島崎 猛 氏「柿公(しこう)窯」茨城県高萩市横川1052-1、TEL: 0293-28-0066)

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