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2007.04

 
花まつり

4月8日は、お釈迦さまが誕生された日とされています。これをお祝いするのが花まつりです。他にも「仏生会(ぶっしょうえ)」「灌仏会(かんぶつえ)」などの呼び方があります。
花御堂(はなみどう)の中に灌仏盤を置き、そこに甘茶を入れます。その中央に誕生仏(お釈迦さまの幼児のお姿の像)をお祀りして、柄杓を使ってこのお像に甘茶をかけます。

お釈迦さまが誕生されたとき、七歩歩んで「天上天下 唯我独尊」(誕生偈)と言われた、と伝えられています。(四方に七歩ずつ歩んでこう言われた、という説もあります。)これは史実というよりも、後に仏伝に加えられた、お釈迦さまを神格化する話のひとつです。
言い伝えとはいえ、この話の意味するところはとても深いように思われます。覚りをひらかれた、いわばまったく新しく生まれ変わられたお釈迦さまのご心境を、肉体のご誕生のときに重ねて表現したものですから…。 「天上天下」という言葉からは、清澄で明朗な意識が、ありとあらゆる方向へ広がってゆくのを感じます。言葉をかえれば、宇宙(物理的宇宙、精神的宇宙)全体を眺めている、また宇宙全体から眺められている我、とも言えましょう。
「唯我独尊」という表現は、覚醒意識の頂点に到達してしまったことを淡々と写し取った言葉のように思われます。また、そこに一抹の寂しさ─天才の孤独も感じます。お釈迦さまが初めて教えを説かれる前に、「この微妙な教えを説いたとしても、むさぼりにふけり、怒りと無知に覆われた人々はこれを理解することができないであろう」と躊躇されたことを思い出します。

誕生偈の印象はともかくとしましても、私たちが誕生仏を花で飾り、甘茶をかけてお祝いしている様子をご覧になり、お釈迦さまはきっと優しく微笑んでおられることでしょう。

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