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2009.04

 
映画を見ました

映画「おくりびと」─
評判通りの優れた作品で、感動しました。

僧侶の立場で観ますと、余計に臨場感といいますか、生々しく感じられるものがあります。

独り帰る道で、初めて葬儀の導師を勤めたときのことを想い出しました。
今から16年前のことです。
そのときは私の体調がひどく悪く、通夜ではほとんど声が出ませんでした。
お父さんが亡くなられ、一人娘さんが喪主でした。
「昨日は声が出なくて申し訳ありませんでした。」
と、翌日の葬儀のときに申しましたら、
「いいえ。一所懸命読経して頂いて、父も喜んでいると思います。」
というふうに言って下さいました。
その後─確か一周忌のときでした。私が、
「葬儀のとき、声が出なかったのを覚えています。
それと、一つ気になったことがありまして─。
あのときにあなたはとても落ち着いておられて、
こう言っては何ですが、晴れやかなお顔をしているようにさえ
お見受けした…そのような記憶があるのですが。」
と申しました。
お嬢さんはしばらく考えたあと、ニッコリ笑われて、
「そうですか。ええ、そうだったかも知れません。
実は、病院で父を看取ったのですが、
父が亡くなった瞬間、父の魂が、ベッドの脇にいる私の胸にスッと飛び込んできたのです。
何かそういう感じがして…。
それ以来、ずっと一緒にいるような感じがしていて、
葬儀の時もあまり悲しくなかったのでしょう。」
このようにおっしゃられたのです。

僧侶にならなければ伺えないお話で、
有り難く感じたのを覚えています。

さて、「おくりびと」を観た晩のこと。夢を見ました。
(10年前に亡くなった)友人の棺を、火葬炉の中におさめている、
そこに私が立ち会って、炉の中を見ている、という夢でした。

映画は(私には)少し刺激が強すぎたのかも知れません。■

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