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2011.03

 
法然上人夢譚(むたん)(2)... 三人の独白

法然上人夢譚 (1)... 一弟子の夢物語

法然上人夢譚 (3)... 六人の独白
法然上人夢譚 (4)... 四人の独白
法然上人夢譚 (5)... 四人の独白
法然上人夢譚 (6)... 四人の独白
法然上人夢譚 (7)... 三人の独白
法然上人夢譚 (8)... 三人の独白

――「真言宗の学僧が法然さまを訪ねてこられ、私も同席を許されました。法然さまは普段は難しい経典の話はされませんが、このときは相手がいろいろと質問をしてくるものですから、様々な経論からの引用をよく話されました。
そのときのことはとても印象的でした。まるで『わたしは弘法大師の講義を三日ほど前に受けて来たばかりだよ。どんな講義だったかというとね…』というように聞こえたのです。とにかく臨場感にあふれていました。
喩えて言うならば、その学僧は噂を聞いて初めてその土地にやって来た旅人、法然さまは何十年もそこに住んでいて土地のことは隅から隅まで知り尽くしている、という風でした。
学僧は法然さまと議論をしに来たに違いありませんが、逆に深く感銘を受けたようでした」

◇ ◆ ◇

――「法然さまのお側には、いつも人がたくさんいました。私のような女、しかも身分の低い者がお側に近寄ることはできない。そう思っていました。いつも遠くから、法然さまのお姿をじっと見つめていたのです。まばたきするのも惜しいくらいでした。
(こちらを、私の方を見て下さい!)
この願いが通じることもありました。でも、そう願っているだけでも私は充分に幸せだったのです」

◇ ◆ ◇

――「私はとても罪深い人間です。
それは、私自身が一番よく知っていることでした。世間の人がどう思おうが関係ありません。それが事実なのですから。
罪深い─そのことにどうしても耐えられなかったのでしょうか、今でもよく分かりません。しかし、気がついたときには法然さまの前にいました。眩しい光に照らされているようでした。
私が何を言ったのか、よく覚えていません。多分支離滅裂なことだったでしょう。法然さまを前にして、かなりの緊張もあったと思います。
法然さまは、私の目を真っすぐに見つめながらその支離滅裂な話を聴いて下さいました。いや、私の下らない話は聴いておられなかったかも知れません。ただこんなにちっぽけな私のことを、全身で包んで下さった…そんな感じでした。『全身』というのは、法然さまの全体であり、同時に何かそれ以上の、とてつもなく大きな何かでした。
そう感じた瞬間、思ったのです。
『私が、この罪深いちっぽけな存在が認められた…』
その時を―私の人生で最も尊い瞬間を忘れないために、毎日お念仏を称えています」■

(この話は夢物語であり、歴史的事実ではありません)

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