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2022.12

 
葬儀について再び
笠原 泰淳 記(令和4年12月)

 以前から葬儀を簡素化する傾向はありました。このコロナ禍によってさらに進んでいるようです。通夜・葬儀を行なうこともありますが、「一日葬」の依頼が増えています。ある方に伺ったのですが、「二日葬」というプランを紹介している葬儀社もあるそうです。まるで通夜式が「オプション」であるかのようで、これには驚きました。一日葬が標準になりつつあるということでしょうか。  今回はそうした状況を鑑み、以前書いたコラムを再掲することにいたします。(2014年3月のコラムより)

赤ちゃんがオギャーと生まれるとき、お母さんは「…!」と踏ん張ります。同じように、人がこの世を去るときには縁者の方々と共に私ども僧侶が足を踏ん張って「エイヤッ!」と送り出さなければなりません。簡単に言うとそれが葬儀式です。儀式というと「形式ばったことは嫌いです」という方もいるかもしれません。しかし、面倒くさいからと言ってこの「エイヤッ!」を省略してしまうと、安らかにあの世に生まれることは叶わない。私はそう思うのです。
では葬儀の中でお坊さんは何をやっているのでしょう。訳の分からない(ように聞こえる)読経は、それぞれ意味があることなのです。ただのBGMだと思っていては大間違い。一般の方がそう思うのならまだしも、葬儀社の職員の中にもそう思っている人がいるのは誠に残念なことです。
ここで、浄土宗の葬儀を順を追ってご説明しましょう。地方や寺院によって多少の違いがありますので、私がいつも勤めている内容を例としてご紹介します。

  1. 枕経(まくらぎょう)
    亡くなられてから初めて枕元でお勤めするお経です。故人をお導き下さる仏さまがたをお迎えし、故人をお守り頂きます。さらに、お旅立ちに際し故人に「まことの仏弟子」となって頂く儀式(の一部)を勤めます。
    読経の後は、ご家族から故人についての様々なお話を伺います。初めて伺うお宅であれば、お仏壇をよく拝見してご先祖のお戒名を書写し、戒名作成の資料とします。

  2. お通夜
    読経の前半部分で、故人に仏弟子とおなり頂く一連の儀式をつとめ終え、仏弟子としての証し―お戒名をお授けします。お戒名には、次のような字(語句)を盛り込みます。
    • 仏教の教えにちなんだ字
    • これからこのように仏道を歩んで欲しい、という僧侶としての願いを込めた字
    • 故人のお人柄を表す字
    お名前(俗名)の字は、入れる場合と入れない場合があります。
    漢字の構成や音読の響きなどを考慮しながら、総合的に決めてゆきます。

    お戒名をお授けしたあとは、仏さま=阿弥陀如来と極楽浄土をたたえるお経(節がついているので、歌のように聞こえます)、そして阿弥陀如来のまことのお姿を観る方法を故人にお伝えするお経を上げます。さらに、ご参列の方々とお念仏を唱和して安らかなお旅立ちのためにその功徳を捧げます。
    読経後の法話では、お念仏を称えて故人をお送りすることの意味や、どうしてこのお戒名をお授けしたかについての説明などをお話しします。(枕経に伺えなかったときは、お通夜のお経の中に枕経のお経を繰り入れます。)
    こうしてお旅立ちの支度を整え、最後の夜を過ごします。

  3. 葬儀式/告別式
    葬儀式では引導が中心となります。引導とは、故人に教えの中心をお伝えして極楽浄土へとお送りする作法。いわば葬儀の頂点と言えるもので、冒頭に述べた「エイヤッ!」の部分にあたります。
    続く告別式では、ご遺族ご親族はじめ会葬の皆さんに、お別れのご焼香をして頂きます。回数は「一回、ゆっくりと、丁寧に心を込めて」と覚えて頂ければ良いでしょう。
    故人に対してはむろん皆さんさまざまな思いがあるでしょうが、ここでは故人に対して「感謝」と「ねぎらい」の心で手を合わせて頂くのが良いと思います。

  4. 初七日
    故人を極楽浄土へお送りした後、かの国で仏道を前へと進まれるように願って勤める法要です。四十九日法要以降も基本的には同じ主旨のおつとめになります。
以上が葬儀の大体の流れです。(火葬場でのお経は省略しました。)
浄土宗はお念仏を中心とする宗派です。私ども僧侶は上述のように故人に対していろいろとお伝えすることがあるのですが、皆さまは「お念仏をもってお送りする」、これを要点と心得て頂ければ良いと思います。不慣れなことで戸惑いも多いでしょうが、故人をしっかりお送りすることを第一にして下さい。ご会葬の方々に礼を尽くすのは二の次で結構、またそれが許される場でもあります。

ついでながら、東京近辺では「直葬」という送り方(といえるのでしょうか)が増えています。「火葬炉の前で少し読経して下さい」と言われることもたまにあるのですが、その場で取れる時間はせいぜい10分程度。上述の読経の大半を省略する、ということになってしまいます。(ご自宅にご遺体が帰られていれば、火葬前に伺って枕経をつとめることもできますが…)

大切な方をお送りするときは、やはり心を尽くして大切に送りたい。その気持ちは私ども僧侶も同じなのです。
「直葬で良いのか!」
と私は言いたい。
葬儀社さんはある意味で需要に応えるのがお仕事。やはり喪主、遺族となる皆さま方自身に、よくよく考えて頂きたいと思います。☸

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