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2023.11

 
パレスチナ
笠原 泰淳 記(令和5年11月)

 連日パレスチナの痛ましい様子が報道されています。もちろんハマスによる攻撃は許されるものではありませんが、ただただ一刻も早い停戦を祈るばかりです。パレスチナの人々の痛みが増せば増すほど、新たなテロの萌芽を育ててゆくことになるでしょう。またパレスチナの外側の世界にも、こうした萌芽が広がってゆくのではないかと懸念します。
 ダライラマはかつて、「最大の敵は中国ではなく、私たちの中にある憎しみの心である」と言われたそうです。この言葉は中国とチベットの間のみならず、すべての敵対関係、対立関係にあてはまります。まさに今こそ、この言葉を深く味わうべき時ではないでしょうか。
 外側にいるいわゆる「敵」ではなく、おのれの心を見つめよ—。
 そして憎しみは痛みから生まれます。新たな痛みを生まないようにすること、またすでにある痛みを癒してゆくこと、これを考えたいのです。
 現代は情報が急速かつ広範囲に伝わる時代です。痛みや憎しみも情報に乗って即座に世界中に広がります。対立関係を煽るような発信や、または自己の主張のためにそれを利用したりするプロパガンダには十分注意しなければなりません。
 平和というのは、天気の良い日のように単に雨風のない状態ではありません。人間同士が揉め事を作るわけですから、平和を保つためには自然に任せるのではなく、人間同士の不断の努力が必要です。考え方や利害が異なる人間同士が暮らしてゆく世界ですので、何も起こらない方がおかしいのです。大きな問題に発展しないように、小さな努力を積み重ねてゆく必要がある。そのためには自分の心を見つめることが大事である—わが心の底に暴力の萌芽がないだろうか、と常に観察を怠らないことです。
 戦乱を地球の裏側の遠い場所での話だと眺めているのではなく、私たちの身近なところ、わが心を見つめることから取り組みを始めてゆくことができます。
 子供たちの泣き叫ぶ顔や、状況に圧倒されて放心したような顔ではなく、愛らしい笑顔や夢に輝く瞳を見たい—世界中の人がそう思っているのではないでしょうか。🙏

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