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2004.09

 
お布施について

いつも林海庵のサイトをご覧頂き、ありがとうございます。
このごろ、ご質問やご相談を頂くことが増えてまいりました。「敷居の低いお寺を目指す」というのが当庵の方針のひとつでもあり、ネット上でもそれを大切にしておりますので、ありがたいことだと思っております。
さまざまなメールを頂きますが、特に多いのが「お布施」についてのご質問です。お布施については何度か書きました(Q&Aの9番55番61番62番が、私自身の経験も含めて書いてみます。

以前、まだ僧侶になる前にインドを旅したことがあります。
歩きやすいということでスニーカーを履いていきましたが、あちらはとても暑いので、サンダルが欲しくなりました。早速雑貨店をのぞきました。好みのサンダルが見つかると、次は値段の交渉です。先方はこちらが「ジャパニ」だと分かっていますから、かなりの高額をいってきます。こちらも負けずに値切ってゆく。数分続きましたが、どうにも話がまとまりません。しまいに店のおばさんが、大きな声で、
"How much is your price?"
と聞いてきたのです。
一瞬、頭の中が白くなりました。それまで「○○ルピーなら買うよ」「それがダメなら△△ルピーだ」と言っていたわけなのですが、改めて聞かれ、考えが止まってしまいました。
…そうこうしているうちに結局折合いがついて、取引が成立しました。
インドではごくありふれた値段交渉の一場面。そのときこう思いました。
「今、このサンダルが欲しい。自分はこのサンダルに幾らの価値を見るのか? (それは必要度と懐具合を考えて、自分自身で決めなければならないんだ)」

お布施についてのご質問、特に金額について「相場はいくらですか」というご質問を頂くたびに、この経験を思い出します。お布施は「商品・サービスの対価」ではありませんので、本来比較にはなりません。しかし、仮に商品を買う場合であっても、私たちは
"How much is your price?"
という問いに答えてお金を支払っているでしょうか。あらかじめ示された「市場価格」を見て、その金額を払うことに慣れすぎているのではないでしょうか。せいぜい「こっちの店の方が安い」「安いほうがいい」という比較で安易に支払っているのではないでしょうか。
日用品を買うのにいちいち値段交渉をしていたら、面倒くさいし時間もかかってしょうがない? そうですね。私も、お金を払うときにはいつも『このサンダルが欲しい。自分はこのサンダルに今幾らの価値を見るのか?』と考えるべきだ、と言っているわけではありません。しかし、お布施の額を考えようというときくらいは、「相場はいくら?」という考えから離れても良いのではないでしょうか。